一時的な記憶と長期的な記憶
RAM(ラム)とROM(ロム)は、電気信号を使って読み書きする半導体メモリーです。
同じメモリーですが、RAMとROMは役割や用途が少し異なってきます。
- RAM・・コンピューターが処理で使う一時的な記憶域、いわゆるメモリー
- ROM・・データが書き込まれ 常に保存されている、書き込みができる
半導体
半導体とは、電気を流す導体と電気を流さない不導体の中間の性質をもつ元素のことです。半導体のうち、特に使われているのは原子番号14のケイ素、すなわち英語名で シリコン(Si)です。
シリコンは、リンやホウ素などの別の元素を少し混ぜると、自由電子や正孔が出現して特異な電気的性質を帯びるようになります。前者をN型半導体、後者をP型半導体といいます。このN型半導体とP型半導体を組み合わせたものを トランジスタ、半導体素子ともいいます。
ICT機器・デジタル機器で主に使われるのは、MOSFET(MOS電界効果トランジスタ)といわれます。
ひとことでいえば、電子の流れをコントロールしています。ON、OFFを高速に切り替え、ONを1、OFFを0としてデジタルデータに対応させることができます。
構造や回路の構成は多少異なりますが、トランジスタはCPU、RAM、ROMなどで使われています。
(トランジスタ:米国 物理学者 W・ショックレー、J・バーディン、W・ブラッデンの発明。ノーベル物理学賞受賞。)
RAM
Random Access Memoryの略。ある記憶領域に対して順番にアクセスするのではなく、ランダムに、自由に読み書きを行うことができるメモリーです。
コンピューターが処理の過程で、データを一時的に読み込んだり書き込んだりしますが、パソコンの電源を切るとデータは失われます。揮発性メモリーともいいます。
RAMには2種類あります。DRAMとSRAMです。
DRAM
半導体メモリーの0、1を記憶する最小の区画をメモリーセルといいます。DRAMのメモリーセルは1つのMOSFETと1つキャパシタ(コンデンサ)で構成されています。電荷のある状態を1、そうでない状態を0として扱います。
DRAMは、電荷を維持するため定期的にリフレッシュという動作を行っていることから、動的を意味する Dinamicという言葉が付いています。回路構成がシンプルであることから、大容量化に適しています。
パソコンで使われているメモリーは、DRAMになります。主記憶という役割があるため、メインメモリーともよばれます。
スマートフォンやタブレットでは、モバイル向けのDRAMが使われています。単にRAMともいわれます。
容量が大きいほど処理能力も高い傾向があります。
SRAM
SRAMのメモリーセルは、4つや6つなど複数のMOSFETで構成されています。2つのMOSFETを相補的に1つとして使うCMOSという構造が特徴で、フリップフロップともいいます。
DRAMのようにリフレッシュという動作を必要としなしため、静的を意味するStaticという言葉が付いています。
DRAMと比べると回路構成が複雑、必要なMOSFETが多いため大容量化には適していません。ただ動作速度はDRAMより高速となります。
SRAMは、CPUのレジスタやキャッシュメモリに使われています。
ROM
Read Only Memoryの略。読み出しだけのメモリー、読み出し専用のメモリーです。
電源を切っても もともと書き込まれているデータが消えることはありません。不揮発性メモリーともいいます。
ROMにはいくつか種類があります。
- マスクROM・・製造時に書き込まれたデータは書き換えることができない
- EEPROM、フラッシュメモリー・・ユーザーによる書き換えができる
一般的にROMというと読み出しのみですが、書き換えが可能なROMもあるということです。書き換え可能なROMで 現在最もよく使われているのが、フラッシュメモリーになります。
フラッシュメモリー
マザーボードのBIOSをはじめ、ネットワーク機器のプリンターやルーター、スマートフォンやタブレットの内部ストレージに フラッシュメモリーが使われています。
パソコンのマザーボードにあるフラッシュメモリー。
BIOSプログラムが内蔵されています。
BIOSでユーザーが行った設定変更は、SRAM(CMOS)に記録されるため、BIOSのことを、慣習的にCMOSということがあります。
CMOSの情報は、通常 BIOS電池などで維持されますが、電池切れなどが起きるとSRAMの設定情報が消え、ROMのBIOSプログラム(初期値)に戻ります。
他に、USBメモリー、メモリーカード、SSDなど幅広く使われています。
フラッシュメモリーには、メモリーセルが直列に接続されたNAND型と並列に接続されたNOR型とがありますが、読み書き速度が速く高密度化が可能などから、ストレージ用途としては一般的にNAND型のフラッシュメモリーが使われています。
ROMもRAMと同様、MOSFETが使われています。
RAMとの最も大きな違いは フローティングゲート(浮遊ゲート)の存在です。つまり、ここに電子を閉じ込めることで電荷を維持し、デバイスの電源がOFFの状態でもデータを維持することができます。
BIOSやルーターなどに組み込まれているプログラムは、特定の条件のもとで書き換えが行われます。またスマートフォンやタブレットの内部ストレージ、USBメモリーやSSDのようにデータを保存する役割・機能もあります。
フラッシュメモリーは、ROMから進展し ストレージとして書き換えや書き込みができるようになっています。本来のROM 読み出し専用という意味からは少し外れていますが、あくまで電源を切ってもデータが消えないROMに属しています。
DVD-RAM
CDやDVDのディスクにも RAMやROMという言葉は使われています。CD-ROMやDVD-ROM、DVD-RAMなどです。
半導体メモリーではないのですが、Memoryは記憶という意味なので、CDやDVDにも使われます。
RAMは、Random Access Memory 自由な読み書き。ROMは、Read Only Memory 読み出しのみになります。
市販されている空のDVDのディスクに、DVD-RAMというのがありますが、これはデータの書き換えができるディスクです。
通常 データの書き込みでは、CD-RやDVD-Rを使いますが DVD-RAMは書き換えや削除を行うことができます。書き換えや削除ができるということは、言い換えれば 一時的に記録されているということもできます。
CD-ROM・DVD-ROM
ROMは読み出し専用なので、CD-ROMやDVD-ROMは読み出し専用のディスクになります。
例えば、会計ソフト、年賀状ソフト、ウイルス対策ソフト、インストールディスクなど市販されているソフトは、CD-ROMやDVD-ROMが使われています。
このようなソフトは読み出しだけ行い、パソコンにインストールします。書き換えはできず、記録されているデータが消えることもありません。言い換えれば 内容が長期的に記録されているということができます。
音楽や動画などレンタルのCD・DVDも、読み出しのみのCD-ROMやDVD-ROMが使われています。
半導体メモリーで RAMとROMというときは、電源を切って何も情報が保持されていないならRAM、何かしらの情報が保持されているならROMです。揮発性か不揮発性かの物理的な性質に着目します。
一方、半導体メモリー以外のメディアでRAMとROMというときは、自由な読み書きができるならRAM、読み出し専用ならROM。つまり、純粋に言葉の意味だけ捉えるということになります。