処理速度に影響するメモリー
メモリーは、Windows (OS)やプログラムの起動・動作速度に関わってくる部品です。
メモリーには、デスクトップパソコン用とノートパソコン用のサイズがあります。自作パソコンで使用するのは、デスクトップ用のメモリーです。
このページでは、自作パソコンで使用するメモリーの規格や特徴について解説しています。
大きさ・規格
メモリーは、基盤部分と基板上のチップなどによって構成されています。
基盤部分、メモリー全体のことを メモリーモジュールといい、基板上のチップを メモリーチップ、DRAMチップといいます。
メモリーの規格として、DDR、DDR2、DDR3、DDR4などがありますが、現在の主流は、DDR4です。最近のマザーボードであれば、ほとんどDDR4の対応になります。
自作パソコン、メーカー製のデスクトップパソコンにおいて標準で使用されるメモリー。
デスクトップ用のメモリーは DIMMといいます。
DDR2のメモリー。
主に XP、Vistaの世代。切り欠きが右寄りにあるのが特徴です。
DDR3のメモリー。
主に Windows 7の世代。切り欠きが左寄りにあるのが特徴です。
DDR4のメモリー。
主に Windows 10・11の世代。DDR2と似ており 切り欠きがやや右寄りにあるのが特徴です。
メモリーにはシールが貼られており、そのメモリーを製造したメーカー名、規格、動作電圧などが記載されています。
メモリーを製造したメーカー名と、メモリーチップに刻印されているメーカー名は同一の場合もあれば、別々の場合もあります。
DDR2、DDR3、DDR4
現在、マザーボードで主に使用されるメモリーは、DDR3、DDR4です。DDR2、DDR3、DDR4は転送速度の違いで、さらに細かく分類されます。
DDR2
- DDR2-533(PC2-4200)
- DDR2-667(PC2-5300)
- DDR2-800(PC2-6400)
DDR3
- DDR3-1066(PC3-8500)
- DDR3-1333(PC3-10600)
- DDR3-1600(PC3-12800)
DDR4
- DDR4-2133(PC4-17000)
- DDR4-2400(PC4-19200)
- DDR4-2666(PC4-21300)
- DDR4-3200(PC4-25600)
DDR5
- DDR5-4800(PC5-38400)
DDR4-2400、DDR4-2666などを チップ規格、PC4-19200やPC4-21300などを モジュール規格といいます。新しいメモリーの規格、数字が大きいほど速くなります。
最も新しい規格はDDR5で、Intelの第12世代 CPUで対応しています。
SPD
パソコンパーツは、基本的な情報を格納している領域 ROMを持っており、BIOS・UEFIはそれを認識して表示しています。
メモリーでは、そのROMのことをSPDといいます。
CPU-Z、Memoryタブ。DDRの種類、容量、Dram Freqency。
Dram Freqencyは、実際の周波数、実クロック。実クロックを2倍したものが、メモリーチップの規格、ここでは DDR3-1600になります。
DDRは、ダブルデータレートの略で クロックの立ち上がりと立ち下がりの両方で転送を行うため、実クロックの2倍が一般的に動作周波数といわれるものになります。
メモリーのチップ規格というのは、一秒間におけるデータ転送回数、転送できるbit数を表していることになります。そのためメーカーによっては、DDR4-2400を 2400 MT/sのように表記していることがあります。
DIMMの一度に転送できるデータは64bit(8バイト)であることから、チップ規格を8倍すると メモリー全体の転送速度を表すモジュール規格になります。
タスクマネージャー→パフォーマンス→メモリー
DDR4-2400の例、チップ規格が表示されています。
SPD。
スロット別に、DDRの種類、メモリーモジュールの規格、メモリーモジュールの製造メーカー、DRAMチップのメーカー、型番、個体番号、容量、製造年月日などを知ることができます。
スロットは、一般的にBIOSで認識・表示されている順番になります。
複数の異なる規格、例えばDDR3-1333とDDR-1600が混在する場合は、周波数の低いDDR3-1333に合わせて動作します。
DDR3-1600に、DDR3-1333を追加。
Dram Freqency、転送速度は、DDR3-1333に合わせられます。下位互換性ともいいます。
メモリーの規格や動作の仕様は、半導体標準化団体 JEDECにより策定されており、チップ規格、モジュール規格、動作電圧などは決まっています。
SPDには、JEDECの仕様に沿った複数の動作パターンの設定が記録されており、BIOS・UEFIでは、特別な設定を行わない限り CPUや他のメモリーなどに合わせて動作するようになっています。メモリーの下位互換もこれにあたります。
なお、SPDはモジュールメーカーが製造時に記録しているもので、メモリーによってはいくつか表示されない項目もあります。
XMP
XMPは、Extreme Memory Profileの略。対応しているメモリーと対応していないメモリーがあります。
XMP。
メモリーの拡張設定が書き込まれた プロファイルが用意されており、UEFIで読み込んでメモリーの性能をあげることができます。
Intelの策定した規格であり、Intelのチップセットを搭載したマザーボードで設定項目があります。
UEFIでは、XMPは無効になっているため、XMPに対応しているメモリーであれば、プロファイルを読み込むことでメモリーの設定を変更することができます。
しかし、XMPプロファイルで メモリーの動作周波数を変更すると、マザーボードによっては、UEFI・Windowsが起動しなくなることがあります。CPUの対応している動作周波数を超えるとオーバークロックになります。上級者むけです。
基本的にメモリーのオーバークロックは、Intelでは ZやXからはじまるチップセットのみ対応しています。
このようなXMPに対応しているメモリーは、オーバークロックできるものが多く、AMDでも使われることがありますが、使い方や状況によっては起動しなくなる、故障やトラブルの原因になる可能性もあります。
基本的にXMPを使うことはありません。メモリーでXMP対応とあっても、別途プロファイルを読み込まない場合は、そのメモリーの規格で動作します。
動作電圧
メモリーは、DDRの種類によって動作電圧は異なります。メモリーの容量の増加や速度が大きくなりつつ、動作電圧、消費電力は少なくなっています。
- DDR2・・・1.8V
- DDR3・・・1.5V
- DDR4・・・1.2V
- DDR5・・・1.1V
DDR3の低電圧版に DDR3L 1.35Vがあります。対応しているチップセット・マザーボードで使うことができます。
DDR3 1.5V。
容量
メモリーの容量を表す単位はGBです。どれだけプログラムを起動できるか、同時に作業ができるかに影響しています。
メモリーで最も関係しているのはOSです。
32bit OSでは4GBまでのメモリーしか認識できませんが、64bit OSでは4GB以上(8GBや16GBなど)のメモリーを使用できます。
CPUは、直接メモリーとデータ転送を行い、メモリーを制御する メモリーコントローラーを内蔵しています。つまりCPUとメモリーは、パソコンの中核にあり全体的な性能を決めているといえます。
Intel CPUのページ。
CPUの世代が進み、性能が向上するにつれ 転送速度の速いチップ規格になり、最大メモリー搭載量、最大メモリー帯域幅なども増えている傾向があります。
基本的に対応しているメモリーの規格、最大メモリー搭載量というのは、CPUによって決まります。そのため、CPUがリリースされる時期に対応したメモリーも出てきます。
またメモリーの1枚あたりの容量は4GB・8GB・16GBとなってきてきます。
実際にCPUを使う場合は、マザーボードとの組み合わせになるため、メモリーの規格や最大メモリー搭載量はマザーボードの仕様によって調整されます。そのため最終的な適合メモリーは、マザーボードで確認することになります。
マザーボードの最大メモリー搭載量は 32GBや64GBなどが標準となりつつあります。
メモリーは、SSDやHDDともアプリケーションやデータを読み書きするために連動しているところがあります。
システムドライブがHDDの場合、CPUやメモリーの処理が高速であるため、HDDの読み書きを待つような局面が多くなり、十分なメモリーを搭載したとしても全体的なパフォーマンスに影響する、他のデバイスが十分に使われないなど、HDDがボトルネックになることがあります。
ヒートスプレッダ
メモリーに取り付けられている金属製のものをヒートスプレッダといいます。一部メーカーのメモリーでヒートスプレッダ付きのものがあります。
メモリーをより冷却するために使用されます。
メモリーからヒートスプレッダを取り外すことは基本的にできません。
後付けできるようにヒートスプレッダのみ販売されていることがありますが、この場合は着脱可能です。
また傾向として、XMPに対応しているようなメモリーはオーバークロックすることになるため、発熱対策として このようなヒートスプレッダが付いていることが多くなっています。ただXMPに対応していなくても、ヒートスプレッダは付いていることがあります。
取り付け
メモリーの取り付けは、マザーボードのメモリースロットに行います。
マザーボードによってメモリースロットの数は異なりますが、ATXのマザーボードなら4つ、MicroATXのマザーボードでは2~4つが一般的です。
同じメモリーをそれぞれ同じ色のメモリースロットに取り付けることで、2本1組 デュアルチャネルで動作するようになっています。帯域幅が広がり、理論上 パフォーマンスは向上します。
切り欠きを合わせて取り付けます。
近年のメモリースロットは、ロックが片側だけのものが増えています。やや取り付けにくいのですが、メモリーは大きく傾けず スロットに対して垂直に行います。
メモリースロットは色分けされています。同じメモリーをそれぞれ増設します。
4GB×2、(4GB×2)×2、8GB×2、(8GB×2)×2などの組み合わせが多くなっています。
デュアルチャネルで動作。
デュアルチャネルは、必ず同じメモリーでなければならないというわけではありません。異なるメーカー・型番・容量でも基本的に構成されます。ただ安定性などの観点から、2枚1組のものを使ったほうがよいと考えられます。
またデュアルチャネルではなく、4GBや8GBのメモリーを1本だけスロットに取り付けたり、デュアルチャネルの2本に1本追加するいうこともあります。この場合、マザーボードのマニュアルに推奨のスロットが記載されていることがあります。
一般的に4本のメモリーそれぞれ別々のメーカーで容量も異なる、DDR3-1333とDDR3-1600が混在しているという場合でも、概ね動作します。
対応メモリー
マザーボードのパッケージやマニュアル、Webサイトに対応メモリーの規格が記載されています。メーカーによっては、動作確認済のメモリーを載せていることもあります。
対応メモリーの規格や最大搭載可能メモリーが記載されています。
DDR3 1600/1333/1066、MAX 32GBとあれば、対応メモリーは DDR-1600、DDR3-1333、DDR3-1066で、マザーボードには最大で32GB搭載できることになります。
また、DDR4 2666/2400/2133 MAX 64GBなどでも同様です。
いずれも、チップ規格に着目し転送速度の速い DDR3-1600、DDR4-2666などから探していくのが一般的です。
ただマザーボードに対応しているメモリーとはいえ、実際にどの周波数で動作するかというのは、CPUによって決まります。
例えば、DDR3-1333、DDR3-1600対応のマザーボードがあるとします、この場合 取り付けているCPUによって動作周波数が異なるということがあります。DDR3-1600のメモリーを取り付けたときに、DDR3-1333まで対応のCPUであれば、DDR3-1333で動作、DDR3-1600まで対応のCPUであれば DDR3-1600で動作します。事例としては多くはありませんが、このようなこともあります。
つまり、必ずしもメモリーの規格やマザーボードの対応のとおりに動作するというわけではなく、最も優先されるのは CPUの対応ということになります。
そのため、マザーボードの対応と合わせて、Intel・AMDともにCPUがメモリーのどの周波数まで対応しているかというのを確認することがあります。
O.Cは、オーバークロックの略で、メモリー規格に(O.C)と記載されていることがあります。IntelではCPUの対応するチップ規格より大きいものが、基本的に(O.C)となります。DDR3-1600やDDR4-2666より動作周波数の高いメモリーで、オーバークロックメモリーとして市販されていることがあります。上級者むけです。
U-DIMM
自作パソコンもメーカー製パソコンも、一般的に使われるメモリーは、Unbufferedであり、Non ECCのメモリーです。自作パソコンで用いるメモリーは、Unbufferedであることから U-DIMMと表記されていることがあります。
レジスタード・バッファと呼ばれる回路を搭載した Bufferedのメモリーやエラーチェック機能を有するECCのメモリーは、主にサーバーで使われます。これらのメモリーは、チップセットやCPUが対応していないと動作しません。
サーバー向けのメモリーは、例えば PC3-12800Eのように モジュール規格の末尾にECC対応を表す Eが付いていることがあります。パソコン向けのメモリーは、PC3-12800のように無印か、PC3-12800Uのように U-DIMMを表すUが付いていることが多くなっています。
ただ、UnbufferedのUであっても ECC対応と記載されていることもあります。このような末尾EやUのメモリーは、一般向けというよりも 主に企業やサーバー向けに使われていたものであり、中古市場に多く流通しています。ECC対応ではないかどうかの確認など 使用する場合はやや注意する必要があります。
また低電圧版は、DDR3LやPC3Lのように チップ規格やモジュール規格に Lが付きます。
メーカー
DRAMチップのメーカーが、メジャーブランドのもの、メジャーブランドの刻印があるものを、総じて メジャーチップということがあります。
メジャーチップのメーカーは、Micron、Elpida、Samsun、Hynyx(SK hynix)、Nanya、infineonなど、これに近いメーカーとして SEC、elixir、Transcendなどがあります。
主に中古メモリーやバルク品などで使われることがある言葉で、メジャーチップと記載がある場合は大抵上記のメーカーが使われています。
メモリーは他に、JEDEC準拠と記載されていることがあり、JEDEC 半導体技術協会の定めた標準規格に基づいて製造されたメモリーであることを示しています。
パッケージ版のメモリーは主に、Crucial、CFD、Team、Transcend、ADATAなどがあります。
販売形態
メモリーは、バルク品とパッケージ品での販売とがあります。バルク品は主にパソコンショップにおいて簡易包装で販売されています。
バルク品のメモリー。
CFD メモリー。
TEAM メモリー。
Crucial メモリー。
ADATA メモリー。
Silicon Power メモリー。
バルク品に関しては、パソコンショップでショーケースに陳列されていたり、商品札があるため、メモリーモジュールやメモリーチップのメーカーなどを確認することができます。
メモリーはマザーボードと相性の問題で認識されない、動作が安定しないということもまれにあります。パソコンショップでメモリーを購入すると、相性保証を追加できることがあります。初期不良というのもまれにありますが、バルク品であれパッケージ品であれ定められた期間内であれば通常は無償交換となります。
パッケージ版のメモリーは、10年保証や永久保証なども出てきています。
2023年 現在人気のメモリー
メモリーの現在主流の規格は、DDR4です。
第12世代・第13世代のCPUからDDR5に対応しています。マザーボードによって DDR4対応とDDR5対応とに分かれます。
メモリーの総容量としては、4GB×2枚や8GB×2がよく使われています。DDR4になって容量あたりのコストはさらに下がっており、メモリー16GB搭載が標準的になりつつあります。
DDR4-3200が出てきたため、DDR4(2666や2400など)対応のマザーボードで使われることもあります。
このような場合 基本的に取り付けは可能ですが、通常の使用においては 3200ではなく2666や2400などCPUや他のメモリーに合わせて動作します。多少相性や互換性の問題が出ることが考えられます。マザーボードのメーカーで対応メモリーなどが公開されているため、確認したほうがよいと思われます。
最近のマザーボードであれば 主にDDR4を使いますが、DDR3のメモリーもまだ販売されています。