拡張カードの接続規格 PCI-Express
マザーボードの拡張スロットには、PCI-Expressという接続規格があります。略して PCIe、PCI-Eのように表記されることもあります。
現在の主流の接続規格で、市販されているグラフィックボードのほとんどはこの規格になります。グラフィックボード以外では USBボード、キャプチャボード、サウンドカードなどが使われます。
PCI-Expressが登場するまでに主流だった接続規格は AGPという規格です。旧規格であり、現在はほとんど使われていません。
AGP
AGPとは、Accelerated Graphics Portの略。2004年頃までに主流だったグラフィックボードの接続規格。より高速なデータ転送が可能なPCI-Expressの登場により現在では旧規格となっています。
AGPには、AGP1.0、AGP2.0、AGP3.0の3つの規格があり、それぞれ動作電圧が3.3v、1.5v、0.8vと異なります。また転送速度もAGP 1x、2倍モードのAGP 2x、4倍モードのAGP 4x、8倍モードのAGP 8xの4種類があります。
AGPのグラフィックボード。
マザーボードのAGPスロット。
取り付けの際は、動作電圧、転送速度などグラフィックボードやマザーボードの仕様を確認する必要があります。
PCI-Express
2004年頃から登場したAGPに代わるインタフェース。
PCI-Expressにはx1、x4、x8、x16などの種類があり、このうち最も高速な転送速度を持つ x16がグラフィックボードの接続に使用されています。転送速度は AGP x8の約4倍です。
PCI-Express x16のグラフィックボード。端子の左から2cmぐらいのところに切り欠きがあります。
PCI-Express x16 スロット。グラフィックボードはここに接続します。
PCI-Express x1のスロット。グラフィックボード以外のパーツで使うことがあります。
切り欠きに対応した部分が右寄りにあるのは、PCIスロットです。近年の自作パソコンのマザーボードでは、実装されなくなってきています。
今後 PCI-Eに移行していくものと考えられます。
スロットの種類や数、場所はマザーボードによって異なります。
PCI-E スロット
PCI-Expressx16のスロットには、グラフィックボード以外、他のパーツも取り付けることはできます。例えば、USB3.0ボード、LANボード、キャプチャボードなどです。グラフィックボードも含め、これらの機器を拡張カードといいます。
PCI-Express x1の拡張カード。
PCI-Express x4の拡張カード。
これらのパーツは、グラフィックボードのように x16の長さを持っているわけではなく、それよりも短くなっています。
マザーボード側のx16スロットに、これら x4やx1のものも増設は可能です。この場合、転送速度は x4 x1など増設したパーツに合わせられます。ただ x4やx1のスロットは、マザーボード上にPCI-Express x16のスロットとは別に用意されているため、通常はそこに増設することが一般的です。
PCI-Express x16のスロットは、ほとんどグラフィックボード専用と考えてもいいでしょう。
レーン
x1、x4、x8、x16はレーンともいいます。
送信用と受信用のデータ伝送路を2本束ねたもので、レーンを複数束ねることで、高速にデータを転送することができます。例えると道路の車線です。1本より4本、4本より16本の方が車の流れは早くスムーズです。
PCI-Express x16のスロットは16レーン使えて、PCI-Express x1のスロットは1レーン使われています。
このレーンの数、総数は、CPUとチップセットが統合的に管理しています。
一般的にどんなマザーボードでも、グラフィックボードやサウンドカードなど複数の拡張カードを増設できる分のレーン数は確保されています。
PCI-Express x16のスロットが2つあるマザーボードで、グラフィックボードが1枚ならCPUに近い上のスロットに取り付けます。
標準的なCPUは、16レーンをもっており グラフィックボードを取り付けると直接接続されます。基本的にCPUの16レーンというのは、PCI-Express x16スロットのグラフィックボード用になります。
2つある PCI-Express x16スロット(ここでは青と黒)。
CPUのPCI-Eと接続される上のスロットを優先的に使います。
グラフィックボードを2枚使ったりすると、x16が x8+x8、x16+x4(チップセット)のようになります。性能のよいCPUやマザーボードでは、x16+x16などフルで使えます。
Intelでは基本的にZの付くチップセットで、x8+x8のように CPUのレーン分割が行われ、HやBのチップセットは x16+x4のように、もうひとつのスロットにチップセットのレーンが使われます。
CPU-Z、mainboardタブ。Graphic Interface、Link Width。
レーンが分割され、グラフィックボードが x8で動作。
一般的にレーン分割が行わるマザーボードでは、1つめのPCI-E x16スロットにグラフィックボード、2つめのPCI-E x16スロットに、x1やx4の拡張カードという組み合わせでも分割が行われるため、それらの拡張カードは x1やx4のスロット、あるいはチップセットのレーンを使う3つめのx16などに増設します。
PCI-E スロットの仕様は、CPU・チップセットやマザーボードによって異なってくるため、マザーボードのマニュアルで確認が必要です。
PCI-Expressのグラフィックボードや拡張カードを複数取り付けて動作しないという場合は、レーン数が不足していることが考えられます。
NVMe SSD
PCI-Express x1、x16のようなスロットを使わないものの、PCI-Eで動作するデバイスにNVMe SSDがあります。
PCI-Expressのスロットとは別に、M.2スロットがあり ここにNVMe SSDを取り付けて使います。
M.2スロットとNVMe SSD。
主な動作転送モードは、PCI-E×4であり 4レーン使います。
従来のSATAとはインターフェースや伝送路が異なり、SATAⅢより高速な転送速度となります。
通常はチップセットのレーンを使いますが、Intelの第11世代・第12世代、AMDの一部のCPUなどでは、従来の16レーンから20レーンに増加しています。マザーボードが対応していれば、グラフィックボードで16レーン使い、残る4レーンを他のデバイスで使用できることを意味しています。代表的なデバイスは NVMe SSDになります。
NVMe SSDは、CPUとの直接接続やPCIe 4.0など世代の移行で、今後も安定性やパフォーマンスが向上することが考えられます。
世代
PCI-Expressには 2.0や3.0という世代があります。理論的な転送速度に違いがあります。
- PCI-Express 1.1・・2.5Gbps
- PCI-Express 2.0・・PCI Express 1.1の約2倍、5Gbps
- PCI-Express 3.0・・PCI Express 2.0の約2倍、8Gbps
- PCI-Express 4.0・・PCI Express 3.0の約2倍、16Gbps
PCI-Express 3.0や4.0は、PCIe 3.0やPCIe 4.0、あるいは世代 Generationを略して、GEN3やGEN4と表記されることもあります。転送速度は、1レーンあたりの片方向の速度を示しています。
現在のマザーボードやグラフィックボードで使用されているものは、ほとんどがPCI-Express 2.0や3.0のものになりますが、Intelの第11世代のCPUとチップセット、AMDの一部のCPUとチップセット、グラフィックボード、NVMe SSDなどでPCI-Express 4.0に対応しているものがあります。
またIntelの第12世代は、PCIe 5.0に対応しています。
マザーボードのパッケージやマニュアルでは、PCI-Expressの世代を確認できます。
グラフィックボードやNVMe SSDも同様です。
PCI-Express 3.0のグラフィックボードは、3.0のスロットで使用すると上限の速度で使うことができます。
また互換性があるので、PCI-Express 3.0のグラフィックボードを2.0のスロットに、またPCI-Express 2.0のグラフィックボードを3.0のスロットに増設して使用することができます。下位互換となり いずれか低い世代の方に速度は合わせられます。