3つのリテラシー

リテラシー literacy とは、読み書き能力という意味です。

リテラシーの前に、IT、金融、統計のように特定の分野を表す言葉を付けることによって、その領域における知識や能力を示しています。

読み書きというのは、身に付けた知識を自分なりに実際に活用できるかということなので、リテラシーというのは 端的にいえば 利活用能力であるということができます。

情報分野においては、情報機器やインターネットの普及に伴い、情報やITという言葉と結ぶ付けて使われるようになっています。

このページでは、IT分野におけるリテラシー、関連する用語について解説しています。

メディアリテラシー

メディアというのは、手段、媒体という意味です。

そのため、情報を載せることができるもの、伝えていくものをメディアという言葉で表現しています。

メディア

一般的にメディアというと、新聞・雑誌・テレビなど大衆向けのメディア、マスメディアを意味しています。これは情報やメディアの研究が、カナダやイギリスで始まったことや、マスメディアがインターネットよりメディアとして歴史が古いことに由来します。

例えば、カナダではメディアに対し、イデオロギー、商業的、影響力などのキーワードをあげ、メディアの特性を理解することや批判的視点に立つことの重要性を説いています。メディアリテラシーは教育の中にも取り入れられています。

またイギリスでは、メディアリテラシー 18の基本原則において、批判的、クリティカルという言葉が用いられ、クリティカルな知力と主体性が必要であると述べられています。

このように、メディアリテラシーというのは、伝統的にマスメディアが発信している情報を取捨選択し 活用する能力としての意味が強く、裏表・真偽を見抜く、客観的に分析し読み解くというような意味で用いられることがあります。

しかし、近年はソーシャルメディアのように誰でも情報を発信したりすることもできるため、メディアリテラシーは より拡張され概ね次のようにいわれます。

  • メディアの特性を理解する
  • メディアの受発信能力
  • メディアの利活用能力

(メディアリテラシー18の基本原則:英国 教育研究者 レン・マスターマンの提唱)

21世紀型スキル

21世紀型スキルは、21世紀という時代にどのようなスキルが求められるかというのを示しています。

思考の方法、仕事の方法、仕事のツール、社会生活の4つのカテゴリー、10のスキルをあげています。

仕事のツールとして、情報リテラシーとICTリテラシーがあげられています。

メディアリテラシーの他に、情報リテラシーとICTリテラシーという言葉が使われるようになったのは、21世紀型スキルとして取り上げられたことも起因しています。

(21世紀型スキル:教育者・IT企業を中心としたプロジェクト ATC21sの提唱)

情報リテラシー

情報リテラシーは、1989年にアメリカ図書館協会が提唱したところに始まります。

情報は、マスメディアやインターネットからのものだけでなく、生活する中で見聞きするすべてのものが該当します。

要約するのであれば、どのような情報が必要であるのかを認識し、探索、評価、利用、創造、そして伝達するというような意味があります。

提唱された概念をそのまま使うことがありますが、本質的に捉えるなら、コンピューターやエレクトロニクスによって膨大な情報が蓄積され活用される時代において、情報をどのように取り扱い活用していくのか問題提起が行われている、計画・実行・評価・改善という PDCAサイクルのような手法を用いる必要があると解釈することができます。

これは、ひとりひとりが自分で考え自分なりの手法を確立していく必要があるということです。

情報リテラシー

情報機器やインターネットの比重が大きいため、情報リテラシーにおいて、ICTの要素は大きくなります。そのため、文脈によっては 情報分野のリテラシーを指していることもあり、ICTリテラシーと同様 包括的な意味で使われることがあります。

ICTリテラシー

ICTは、情報通信技術、Information and Communication Technologyの略です。

コンピューターやITという言葉は、ハードウェアを指していることが多く、インターネット、通信やコミュニケーションを含めた包括的な言葉として、ICTが使われます。ICTリテラシーは、情報化社会に対応する能力という意味になります。

ICTリテラシー

基本的な考え方としては、様々な領域で共通に適用されるであろう最大公約数のような部分を中心に、ICTリテラシーを身に付けていくことになります。つまり基礎的な部分です。

具体的にいえば、コンピューター、ハードウェアの概要、使用方法、インターネットの仕組み、情報倫理・モラルなどです。

情報活用能力

メディアリテラシーは媒体に主軸をおいた考え方であり、メディアの特性や発信した場合の効果などを推し量る能力です。そのため情報リテラシーやICTリテラシーの両方に含まれると考えることができます。

日本の文部科学省、小・中・高の教育機関においては、情報リテラシーを中心としてメディアリテラシーとICTリテラシーの要素を取り入れて、情報活用能力としています。

プログラミング教育における目的のひとつであるプログラミング的思考は、情報活用能力に含まれるものとなります。文部科学省では、プログラミング的思考を以下のように示しています。

自分が意図する一連の活動を実現するために、どのような動きの組合せが必要であり、一つ一つの動きに対応した記号を、どのように組み合わせたらいいのか、記号の組合せをどのように改善していけば、より意図した活動に近づくのか、といったことを論理的に考えていく力。

専門学校や大学などの高等教育機関では、メディアリテラシーや情報活用能力という言葉より、情報リテラシーやICTリテラシーという言葉が主に使われています。

基本的な情報活用能力は早い段階での修得を目指し、高等教育機関では、より実践的で包括的な情報リテラシーやICTリテラシーが重視されているとみることができます。

デジタルネイティブ

生まれたときや、育ったときにデジタルな環境が普及していた世代を、デジタルネイティブといいます。

概ね、小・中・高で情報系の科目を受けたかどうか、あるいは情報系の専門学校、大学で専門的に学んだかどうかも、デジタルネイティブかどうかの分岐点になるということができます。

仮に改めて定義するのであれば、小・中・高でプログラミング教育を受けた世代といえるかもしれません。公教育、教科の学習の中でタブレット、小型ロボット、センサー、プログラミングなどが出てくるからです。

高等学校の情報科目には、社会と情報、やや応用的になる情報の科学があります。

社会と情報に関しては、基礎的な項目を中心によくまとまられた科目となっています。高校生を対象としているため、専門学校や大学のように難解さを感じさせない内容です。

もし情報リテラシーやICTリテラシーを身につけるというのであれば、この科目の教科書は入門的なものといえます。

デジタルデバイド

情報量の違い、活用法の違いによって生じる差を、デジタルデバイドといいます。これは個人で生じることもあれば、企業やビジネス、地域間、国家間でも生じることもあります。

情報リテラシーやICTリテラシーが、本当に必要なのか?というと、個人の場合は断定はできないでしょう。限られた情報で十分という人もいれば、デジタル機器に関心がないという人もいます。人によって価値感は異なり、客観的な指標を設けることはできないためです。

どちらかというと、企業や組織において情報リテラシーやICTリテラシーは求められる傾向があります。企業や組織では、ICTの活用が省エネルギー、コスト削減、営業利益、新規顧客獲得率など、成果が数値として 定量的にあらわれてくることがあります。また、株主、取引先、従業員、消費者、地域住民、中央省庁など様々な利害関係者、ステークホルダーがいます。

経営者や責任者が、ICTを導入しないという考えであっても、ステークホルダーの要請などによってICTを導入することは多くなります。

そして、職場内研修である OJTや職場外研修である OFF-JTで ICTの研修を行ったり、人的資源として情報リテラシーやICTリテラシーの高い人材を求めるという傾向も出てきます。

つまり、社会的な要請が個人に対して行われ、結果として個人においても情報リテラシーやICTリテラシーを向上させる方向に向かわせると考えられます。

技術者倫理

知識や技能を身につければ、それがリテラシーが高いということになるか?というと、そうは言い切れないでしょう。その使い方を誤れば、利益を追求するだけになったり、環境を破壊したりなども考えられます。

近年は技術者倫理が重視されるようになってきています。

日本においても、国際的な協定に歩調をあわせるかたちで、日本技術者教育認定機構 JABEEが設立されています。科学技術・情報分野の教育機関に対して、教育プログラムの認定が行われています。

JABEEの認定基準のひとつである学習・教育到達目標には、9項目があげられています。そのいくつかのキーワードをあげるならば、そこには地球的視点、社会や自然、社会の要求などが出てきます。情報分野は、情報セキュリティが加わります。

つまり、科学技術や情報の知識だけではなく、より総合的な能力や視点、技術者倫理が求められているということになります。

CSR

ISO 国際標準化機構は、2011年に組織のあり方・社会的責任についてISO26000を提唱しています。

ISO26000は、7つの原則、7つの中核主題から構成されています。7つの中核主題を大きく分けるなら、それは環境と社会に要約されます。環境は、自然環境や生態系サービスを指しているといえるでしょう。

企業・組織の活動は環境や社会への影響を考えて行われるべきであり、企業の社会的責任 CSRの指針ともなるものです。

環境と社会

どのように科学技術・ICT技術が進展したとしても、意思決定は環境と社会とのバランスにおいてなされる、そのような方向に向かっているということになります。

(生態系サービス:国連提唱 基盤サービスを軸に4つの機能に分類)

持続可能な発展

21世紀は環境の時代ともいわれます。

産業革命以降の温室効果ガスの増加と、それが地球環境に大きな影響を与えていることは、気候変動に関する政府間パネル IPCCなどによってすでに明らかにされています。また地球温暖化の他に、海洋のプラスチック汚染なども進行しています。

情報通信技術は、環境負荷の低減や持続可能な発展に寄与できるといわれており、ICTによる環境分野への活用をグリーンITといいます。

持続可能な発展とは、「将来の世代のニーズを満たしつつ、現在の世代のニーズを満たす」ことです。持続可能な社会、持続可能性サステイナビリティともいいます。

現在の世代が、生産や消費、経済活動を重視して、自然環境資源を使い果たしたり、環境そのものに変化を加えると、将来の世代に対して望ましいとはいえないということです。

このような持続可能性という考え方は、長い歴史における経済や産業の発展とその反省により提唱されたものです。科学技術・ICT技術により開発されるものをはじめ、政治や経済などすべての活動は、持続可能性が問われる、持続可能性を軸に評価されるようになるでしょう。

(IPCC:各国の専門家・科学者で構成。科学的知見を集約し評価報告書を提示、ノーベル平和賞受賞。持続可能な発展:国連 ブルントラント委員会の提唱)