パソコン・IT関連の資格

パソコンの資格で代表的なものをあげるなら、MOSとITパスポートになります。MOSは Microsoft Officeの操作、ITパスポートはIT関連の知識に関わる資格です。

ただパソコンを使ったり、パソコンやITに関する資格には他にも多くのものがあります。

このページでは、パソコンやITの資格にどのようなものがあるか、代表的な資格などについて紹介しています。

6つの領域

ハードウェア

パソコンのハードウェアに関するところです。

パソコンやコンピューターの仕組みであったり、周辺機器やLAN、サーバーなど、比較的 身近な部分、目に見えたところの知識です。

このカテゴリーを学ぶと、自分でパソコンや周辺機器、LANを管理したりできるようになる他、ネットワーク機器やサーバーなどの理解も深めることができます。ハードウェアの管理能力を身に付けることができるといえます。

いくつかの資格試験では、ハードウェアの基礎的な知識を問われ、全体の中の一部になっていることがあります。例えば、ITパスポート、P検などです。

純粋にこのカテゴリに近い資格となると、パソコン整備士が該当します。

ソフトウェア

ソフトウェア・アプリケーションを操作する能力・スキルに関するところです。

パソコンにインストールされているソフトで 何かを作成・編集したりできるようになります。アプリケーションの操作能力を身に付けることできるといえます。

例えば、Microsoft Office、CAD、VectorWorks、3DCG、Photoshop、Illustratorがあります。

Microsoft Officeは特によく使われるソフトウェアです。ビジネスでもパーソナルユースでも活用できるため、汎用性が高いといえます。

Photoshop、Illustratorは、ポスターやチラシの作成であるDTPやWebデザインで活用されることがあります。デザインに通じるCAD、3DCG、Photoshop、Illustratorを使う人を、クリエイターともいいます。自分の持つイメージを、アプリケーションを通して形あるものにしていくというカテゴリーです。

また、基本的なパソコン操作の他 Microsoft Officeなど主にソフトウェアの使い方を指導する人をインストラクターといいます。

代表的な資格には、MOS、CAD利用技術者試験、Photoshopクリエイター能力認定試験、Illustratorクリエイター能力認定試験など。

Web

ホームページを作成したり、実際に運用していく知識やスキルに関するところです。

ホームページを作成するHTML言語をはじめ、デザイン、色彩、Web解析、Webマーケティング、ライティングなども関連しています。Webの展開能力を身に付けることができるといえます。

自分でホームページを作成したり、ビジネスに活用したりと様々です。アプリケーションのPhotoshop、色彩やマーケティングの基本的な考え方が関わることもあります。Webデザイナー、Webクリエイターともいわれます。

このカテゴリーは、HTML言語やデザインに主軸をおくか、ビジネスやマーケティングに主軸をおくか、あるいは両方のバランスをとるかなどに分かれる傾向があります。

代表的な資格には、Webクリエイター能力認定試験、ウェブデザイン技能検定、JWSDA Webデザイン検定、ウェブ解析士、ネットショップ実務士、色彩検定など。

プログラミング

システム、仕組みの部分に関係しています。

IT機器やソフトウェアを支えているコンピューター言語やプログラミング言語を学びます。VBA、C言語、C++、Java、Perl、PHP、JavaScript、COBOLなど多様なプログラミング言語があります。 また、データベースを操作する言語としてSQL言語があります。

システムの開発能力を身に付けることができます。

データベース・システム構築、ソフトウェア・アプリ制作、Webシステム構築、ロボット制作など様々です。

PHPやJavaScriptは、Webと関係が深いので Webプログラミングともいわれます。

プログラミング言語を使うことができる人を、プログラマー、システムエンジニアともいいます。Webと同じく 会社設立や起業する人が比較的多く、IT系のベンチャービジネスというのは このカテゴリーから出てくる傾向があります。

代表的な資格には、入門となるITパスポート試験、VBAエキスパート、情報処理技術者能力認定試験、基本・応用情報処理技術者試験、PHP技術者認定試験、データベーススペシャリスト試験、ORACLE MASTERなど。

ネットワーク

企業向けLANやWAN、サーバーに関係しています。Cisco社ルーター、Linuxなどがあげられます。

コンピューター・ネットワーク理論、ネットワークやサーバーの設計・保守・構築などを学びます。

ネットワークの構築能力を身に付けることができます。ネットワークエンジニアと呼ばれます。難易度は高く専門的なカテゴリーです。

代表的な資格には、入門となるITパスポート試験、ドットコムマスター、Cisco技術者認定試験(CCNA、CCNP)、Linux技術者認定試験(LPIC)、ネットワークスペシャリスト試験など。

セキュリティ

近年 情報セキュリティへの関心は高まりつつあります。

企業にとって最も警戒すべき事案のひとつが、セキュリティ事故、インシデントになります。情報セキュリティを含めた統治、ガバナンスが進んでいます。

情報セキュリティ、ISMS、プライバシーマーク、個人情報保護法、マイナンバー制度、不正アクセス禁止法、ネットワーク・データベースのセキュリティなどが関係しています。

セキュリティ技術、情報モラル、情報リテラシー、法律の知識を学んでいきます。

代表的な資格には 2016年に新設された情報セキュリティマネジメント試験、個人情報保護士、個人情報保護実務検定、マイナンバー実務検定、情報セキュリティスペシャリストなど。


MOSとITパスポート

MOS

パソコンで最も使用頻度の高いソフトは何か?といえば、MicrosoftのOfficeになります。Word、Excel、PowerPoint、Accessなどです。

パーソナルユースでも使われますが、会社・事業所などビジネスシーンでは確実に使われるソフトです。このOffice製品を使えるかどうか?スキルを証明する資格が、マイクロソフト・オフィス・スペシャリスト 略してMOS モスになります。

パソコン教室をはじめ、大学の資格支援講座、IT系の専門学校などでも取り上げられることの多い資格で、代表的な資格であることに変わりありません。

独学でも十分に取得ができる資格であり、難易度もそれほど高くはありません。

ITパスポート試験

IT関連では最も有名な国家試験・国家資格です。経済産業省所管の情報処理推進機構 IPAが実施・認定する資格で、情報処理技術者試験の一番基礎的な区分になります。

大学の資格支援講座、IT系の専門学校などでMOSとともによく出てきます。大学によっては、ITパスポートの取得で単位が認定されるところもあります。

パソコン・サーバー・ネットワーク・Excel関数・システム・ソフトウェア・企業活動・経営・法律など IT全般の広範囲な知識を証明する資格です。国家資格でインパクトもやや強い資格です。

その他の資格1

日商PC検定

日商というのは、日本商工会議所の略になります。

日商PC検定は、主にビジネスシーンにおける文書作成・データ活用・プレゼンテーションなどのスキルを証明する資格です。

文書作成は Word、データ活用は Excel、プレゼンテーションは PowerPointを使います。多少IT関連の知識なども学びます。

全般的にビジネスシーンにおける文書作成、データ活用などが想定されています。例えば、社内文書・社外文書の作成、原価率・利益率・目標達成率・前年度比の計算やグラフの作成などです。

MOSが広く浅くというのに対して、日商PCはビジネス向けの知識や実技に重点をおいているという特徴があります。

全国の日本商工会議所には、すべてではありませんがパソコン教室があり、そこで日商PCのカリキュラムが組まれていたり試験会場にもなっています。

サーティファイ認定試験

サーティファイ認定試験は、株式会社サーティファイが管理・運営する資格です。現在 7分野26種類の認定試験が用意されています。

代表的な認定試験には、以下のようなものがあります。

  • 情報処理技術者能力認定試験
  • Webクリエイター能力認定試験
  • Photoshopクリエイター能力認定試験
  • Illustratorクリエイター能力認定試験

他にWord・Excel・PowerPoint・Accessの試験、C言語・Javaのプログラミングに関する試験などがあります。

その他の資格2

パソコン整備士

パソコン整備士協会が実施・運営。パソコン・ネットワーク・サーバーなど 名前の通りハードウェアに主軸をおいた資格。

  • 1級・・企業・事業所レベル、サーバー
  • 2級・・家庭・SOHOレベル、複数台
  • 3級・・個人レベル、PC1台

ハードウェアの他、インターネット、セキュリティ、ソフトウェア、ネットワーク、情報倫理、トラブルシューティングなど。

他の資格と異なるのは、入会や年会費があり活動会員として登録する必要がある点になります。ハードウェア関連のSOHO・法人などで資格取得されることが多いと考えられます。

ドットコムマスター

NTTコミュニケーションズ OCNが運営。ハードウェアよりも、インターネット・ネットワークに主軸をおいている資格。

  • ドットコムマスター アドバンス
  • ドットコムマスター ベーシック

ベーシックが入門、アドバンスが上級。アドバンスにシングルスターとダブルスターがあります。

主催がOCNのため知名度が高く、IT系・プロバイダ系の事業所・法人にそこそこ人気があります。

VBA エキスパート

VBAは、Visual Basic for Applicationsの略で、MicrosoftのWord・ExcelやAccessで使うことができるプログラミング言語です。

主にExcel・Acsessにおいて作業の自動化、データの一括処理、システム開発などで活用されています。

ベーシック(初級)スタンダード(上級)があり、Excel VBAベーシック、スタンダード、Access VBAベーシック、スタンダードの4つに分類されます。

VGAエキスパートという名称で、MOSと同じく株式会社オデッセイ コミュニケーションズが運営しています。ExcelやAccessでVBAを使えるかどうか、運用できるかどうかのスキルを証明する資格です。

VBAの特徴は、Excelが使用できるパソコンであれば、すぐに始められる点にあります。プログラミング言語の中では、比較的独学もしやすいといえます。

その他の資格3

ICT支援員能力認定試験

学校(小・中・高)におけるプログラミング教育が始まり、本格的にスタートしている資格です。学校でのICT支援を主な目的としています。

実施は、情報ネットワーク教育活用研究協議会。試験は前期・後期の年2回行われ、内容はA領域(実践的知識)とB領域(問題分析・説明力)になります。ICTの基礎的な知識の他、教育分野の知識も必要となるのが特徴です。

ICT支援員、ICT支援員上級の資格があります。

Microsoft Certifications Program

Microsoftの認定資格に、Microsoft Certifications Program(MCP)があります。

Microsoft製品の知識や技術が主な領域になります。製品やジャンル別にいくつか資格があり、やや開発者向け・運用者向けで高度な内容になります。

Microsoftの認定資格ということもあり、IT関連でMicrosoftと関連のある企業・法人でMCPの取得者数などを目標としたり、公開しているところがあります。

Adobe Certified Professional CC 2020

Adobeの認定資格に、Adobe Certified Professional CC 2020があります。

Adobe Creative Cloud 2020に対応する試験で、Photoshop、Illustrator、Premiere Proなどがあり、Photoshop とIllustratorの合格で、Adobe Certified Professional in Visual Design、PhotoshopとPremiere Proの合格で、Adobe Certified Professional in Video Designという認定になります。

特徴としては、Premiere Pro つまり動画編集ソフトウェアの資格があるという点になります。

基本・応用情報技術者試験、情報セキュリティマネジメント試験

ITパスポート試験のワンランク上の資格です。ITパスポートと同様 国家試験・国家資格になります。

コンピュータシステムの開発・運用、ネットワーク、データベース、セキュリティなど。

基本・応用情報技術者試験は、プログラマー、システムエンジニア(SE)を目指す場合に目標とする資格です。

情報セキュリティマネジメント試験は、セキュリティ関連に主軸をおいた資格です。

Cisco 技術者認定試験

企業などで使われる Cisco社 (シスコ社)のルーターやスイッチを扱えるかどうか、スキルを証明する資格です。

CCENT、CCNAという資格で呼ばれます。CCENTが入門・基礎、CCNAが応用。さらに上位には CCNP、CCIE。

Cisco ルーター・スイッチの保守・運用、ネットワーク理論、ネットワーク構築など。

ネットワークエンジニアを目指す場合に目標とする資格です。

Linux 技術者認定試験

LPIC エルピックともいいます。

Level 1~3まであり、Level 1が入門。基礎。勉強してみたいという人は、Level 1だけ資格取得するという方法もあります。

サーバー用OSとして広く使われているLinuxの知識やスキルを証明する資格です。

Linux全般、コマンド操作、管理・保守など。エンジニアを目指す方向けの資格です。

技術士

実施は 公益社団法人 日本技術士会。技術士とは、科学技術に関する知識・技術・実務経験、技術者倫理などを兼ね備えた人材の育成を図るために設けられた資格認定制度で、国家資格となります。

機械、航空・宇宙、建設、化学、農業、環境など21の部門があり、情報分野は情報工学として設けられています。

技術士、技術士補という資格があります。技術士の第二次試験は 実務経験などの条件、論述式問題、口頭試験があり難易度が高いことで知られています。ICT分野では最高峰の資格のひとつといえます。

企業などでの実務経験のある技術者やエンジニアが取得を目指すことがあると考えられます。

PDCAサイクル

PDCAとは、Plan 計画・Do 実行・C 評価・A 改善を行うことです。繰り返し行っていくことからPDCAサイクルともいいます。主に組織や企業における品質管理・業務改善の手法として知られています。

計画においては、現実的な目標であり期限を定めることが重要といわれており、その点で資格というのは、PDCAサイクルに当てはまりやすいといえます。

具体的にいえば、取得を目指す資格を決め 学習を行います。試験をうけてその結果から問題点を分析して改善を行うというようになります。あるいは、学習後に模擬試験や過去問を解いて評価・改善を行い、試験をうけるというかたちになります。

実際の資格の勉強などでは、このようなPDCAサイクルを意識していなくても適用していることもあります。

一般的に、資格は一定の知識や能力を示すことになりますが、それとは別に 目標を立て努力して物事を進めていくことができるという比較的ポジティブな印象を与える傾向があるといえます。

シグナリング

経済学の用語には、シグナリングという言葉があります。

情報の非対称性、つまり情報に差異がある状態において、情報を伝達することをシグナリングといいます。

例えば、就職・転職活動の際に、採用する側と応募する側ではそれぞれもっている情報に差異があります。採用側は応募者がどのような能力をもっているか分からないため、この状態は情報に差異があることになります。

ここで応募する側の履歴書の資格欄に、資格が記載されていれば、情報を伝達することができ、採用側は応募者がどのような能力を持っているのか知ることができます。

一般的に就職や転職で資格が有用であるといわれるのは、資格がシグナリングとして用いられるためです。

この点に着目して資格を選ぶなら、知名度の高い資格、企業の求める専門性の高い資格などがあげられます。

関連性

資格の取得や勉強を開始する際は、自分の行っている仕事や将来取り組もうと考えていることと関連付けて学んでいくという方法があります。

情報分野は、他の学問や領域と相互に関連しているが多くなっています。

例えば、何らかの集計や調査などでのExcelの使用、教育の手法のひとつとしてe-ラーニングやデジタル機器の活用、マーケティングの手法としてWebを活用したりということがあります。

このように、情報分野のスキルというのは、他の領域を補完したり、物事を実現する方法として情報分野、ICTを使うということがあります。

この点に着目するなら、職業と関連性の高い資格、実用性の高い資格などがあげられます。

リカレント教育

リカレント教育とは、学び直し、より正確にいえば、働きながら学ぶ、生涯にわたる学び、循環型学習という意味です。この概念は、経済協力開発機構 OECDでも採用されています。

パソコンやインターネットが普及したのがここ数十年ということもあり、ITの分野は、新たな学びや学び直し、リカレント教育の対象のひとつともいえます。

日本は、リカレント教育に関しては遅れていると指摘されています。

大学などを例に取ると、大学在籍者の95%以上が20才前後の年齢層で構成されており、社会人は約3%ほどです。これに対して、欧米などの諸外国では、社会人の占める割合は20%を超えます。

この一例からも分かるように、日本の社会構造、雇用・労働形態の影響もありますが、生涯にわたる学習、循環型の学習、仕事に学びを取り入れて拡張させるという概念はそれほど普及していないといえます。

グローバルな視点でいえば、リカレント教育は価値があるものと捉えられており、社会人になってからの新たな学びや学び直しは、一般的な考え方であるということになります。

(リカレント教育:スウェーデン 経済学者ゴスタ・レーンの提唱)